日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コールレート)を1.25%程度に引き上げました。 変動金利で住宅ローンを借りている人、これから借りる人にとって気になるのは「金利がいくら上がったら、固定金利で借りたほうが 得だったことになるのか」でしょう。この記事では、その損益分岐を、本サイトの計算エンジンで具体的に確かめます。 金利や制度は変わりますので、本文は2026年9月21日時点の情報です。
2026年9月の金利環境
- 政策金利:日本銀行は2026年6月16日に1.0%程度へ(6月17日から適用)、9月18日に1.25%程度へ (9月24日から適用)引き上げを決定しました(日本銀行)。最新の値と今後の会合日程は、日銀の政策金利は現在いくら?にまとめています。
- 変動金利:銀行の変動金利は短期プライムレートを基準に見直されます。たとえば三菱UFJ銀行は、2025年12月19日発表の 短期プライムレート引き上げに伴い、2026年3月から変動金利の基準金利を毎月1日を基準日として見直すと案内しています。
- 固定金利:住宅金融支援機構によると、2026年9月資金受取分のフラット35(借入期間21〜35年・融資率9割以下)は 最も多い金利が年3.460%(金利の範囲は3.460〜5.690%)です。日本経済新聞は、現行制度になった2017年10月以降で最高の水準と 報じています。
変動金利の返済額が決まる仕組み
多摩信用金庫の説明では、変動金利型は金利を原則として半年ごとに見直しますが、金利が上がっても返済額は5年間変わりません (5年ルール)。5年後の見直しで返済額が増える場合も、直前の返済額の125%(25%増)までです(125%ルール)。 そのため、返済額が利息をまかなえなくなると、払いきれない「未払利息」が発生します。返済は①未払利息、②約定利息、③元金の順に 充てられます。これらのルールは金融機関によって異なり、採用していない金融機関もあります。
比較の前提
借入¥30,000,000・35年・元利均等返済で、変動金利は当初1.0%(あくまで例です)、固定金利はフラット35の3.46%とします。 金利が変わらなければ、毎月の返済額は変動が¥84,686、固定が¥123,293で、 総返済額は変動が3,557万円、固定が5,178万円。差は1,622万円にもなります。 この差が、変動金利が上がっても逆転しにくい「余裕」です。
金利が上がると、いつ逆転するのか
変動金利が「指定した時期に一度だけ上がり、以後はそのまま」というシナリオで、総返済額の差(変動 − 固定)を比べます。 マイナスは変動のほうが安いことを意味します(返済額の見直しルールは考えず、金利が変わればすぐに返済額が変わる想定です)。
| 上昇幅 | 1年後に上昇 | 5年後に上昇 | 10年後に上昇 | 15年後に上昇 |
|---|---|---|---|---|
| 上がらない | −1,622万円 | −1,622万円 | −1,622万円 | −1,622万円 |
| +1%(2.0%) | −1,039万円 | −1,167万円 | −1,305万円 | −1,418万円 |
| +2%(3.0%) | −402万円 | −674万円 | −965万円 | −1,203万円 |
| +3%(4.0%) | +285万円 | −145万円 | −604万円 | −976万円 |
| +4%(5.0%) | +1,018万円 | +418万円 | −221万円 | −737万円 |
たとえば5年後に金利が+3.26%(4.26%)まで上がり、以後そのままだと、総返済額が固定と並びます。 1年後に上がる場合は+2.59%(3.59%)で並びます。逆に、上がる時期が遅いほど、残りの返済期間が短く元本も 減っているため、逆転に必要な上昇幅は大きくなります。
| 金利が上がる時期 | 損益分岐の上昇幅(ルールなし) | 損益分岐の上昇幅(5年ルールあり) |
|---|---|---|
| 1年後 | +2.59% | +2.31% |
| 5年後 | +3.26% | +3.08% |
| 10年後 | +4.56% | +4.11% |
| 15年後 | +6.84% | +5.66% |
| 20年後 | +11.54% | +8.17% |
当初の金利差が小さいと、逆転はずっと早い
逆転までの余裕を決めるのは、変動と固定の当初の金利差です。5年後に一度上がって以後そのままとした場合、変動の当初金利ごとに、 固定3.46%と並ぶ金利は次のとおりです。
| 変動金利(当初) | 損益分岐の上昇幅 | 並ぶときの変動金利 |
|---|---|---|
| 0.5% | +3.93% | 4.43% |
| 1.0% | +3.26% | 4.26% |
| 1.5% | +2.60% | 4.10% |
| 2.0% | +1.93% | 3.93% |
| 2.5% | +1.27% | 3.77% |
当初の金利差が大きいほど、変動金利は長く「先に得をする」ため、固定に逆転されにくくなります。ご自身の変動金利と、検討中の固定金利の 差で、変動金利と固定金利の比較シミュレーションを試してみてください。
5年ルールは、負担を先送りしているだけかもしれない
5年ルール・125%ルールは、急な返済額の増加を和らげる仕組みです。ただし、返済額が抑えられている間も金利は上がった水準でかかるため、 元本が減りにくくなります。本サイトのモデルで、借入1年後に金利が上がった場合を比べると、次のとおりです。 (未払利息には利息がつかず、見直し時は未払利息を含めた残高で返済額を再計算し、返済期間の終了時に残る元本・未払利息は最終回に 一括で返済すると仮定しています。実際の取り扱いは金融機関によって異なります。)
| 1年後の上昇幅 | 最大の毎月返済額 (ルールなし/あり) | 未払利息の最大額 (5年ルールあり) | 完済時の一括返済 (5年ルールあり) | 総返済額 (ルールなし/あり) |
|---|---|---|---|---|
| +2%(3.0%) | ¥114,566 / ¥125,618 | なし | なし | 4,776万円 / 4,912万円 |
| +4%(5.0%) | ¥149,390 / ¥242,999 | ¥2,759,874 | なし | 6,197万円 / 7,086万円 |
| +6%(7.0%) | ¥188,356 / ¥323,050 | ¥10,663,304 | ¥22,698,278 | 7,787万円 / 9,929万円 |
上昇幅が+2%なら、5年ルールがあることによる総返済額の増加は136万円にとどまります。 しかし+4%になると889万円に広がり、返済額の増加が125%ずつに抑えられる間に 未払利息がふくらみます。最悪の場合は、返済期間の終了時に多額の一括返済が必要になります。 5年ルールは「返済額の急増を和らげる」効果はありますが、「総額を減らす」仕組みではありません。
考えるときのポイント
- いくらまで上がっても払えるか:損益分岐は総額の話です。家計として返済額がいくらまで上がっても続けられるかは、 別に確認しておく必要があります。
- 金利差が大きいほど、変動は有利:ただし、金利が上がる時期と幅は誰にも分かりません。上の表は、その前提が ずれたときの結果を示すものです。
- 繰上返済で元本を減らす:残高が小さいほど、金利上昇の影響も小さくなります。効果は繰上返済の実行時期別の比較で確認できます。
- 固定期間選択型:10年固定などの固定期間選択型は、本サイトの比較の対象外です。
この記事は、特定の金利タイプをすすめるものではありません。金利は変動し、借入先によって条件も異なります。最新の金利と契約内容は、 住宅金融支援機構や借入先の金融機関で確認してください。
出典
- 日本銀行 — 金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日:無担保コールレートを1.25%程度へ、9月24日から適用)
- 日本銀行 — 金融市場調節方針の変更について(2026年6月16日:1.0%程度へ、6月17日から適用)
- 住宅金融支援機構【フラット35】— 最新の金利情報(2026年9月資金受取分、借入期間21〜35年・融資率9割以下)
- 日本経済新聞 — フラット35、9月最低金利3.460%に上昇 現行制度で最高
- 三菱UFJ銀行 — 【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて(2026年3月から毎月見直し)
- 多摩信用金庫 — 変動金利型住宅ローンの返済額見直しのルール(5年ルール・125%ルール・未払利息、返済の充当順)