年末調整で戻る額は、毎年同じではありません。令和8年は、令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられ、その分が12月の年末調整で1年分まとめて精算されます。ただし、戻る額のすべてが今回の改正によるものではありません。
この記事では、独身で毎月同額の月給だけをもらう人が年末調整で戻る額を年収別に計算し、その理由を3つに分けて示します。計算は当サイトの年末調整シミュレーションと同じもので、国税庁の令和8年分の源泉徴収税額表と、所得税法・租税特別措置法の条文にもとづいています。
戻る額は「源泉徴収された税額」と「本来の年税額」の差
毎月の給与から引かれる所得税は、国税庁の源泉徴収税額表(月額表)で決まる概算です。年末調整では、1年間の給与から社会保険料・生命保険料・家族の控除・基礎控除などを差し引いて、本来の1年間の税額(年調年税額)を出し、毎月の源泉徴収の合計と比べます。源泉徴収の合計のほうが多ければ、その差額が戻ります。
国税庁のあらましによると、令和8年11月までの源泉徴収は従来のままで、改正後の基礎控除と給与所得控除で1年分の税額を計算し、改正前の税額表で源泉徴収した税額と精算するのは12月の年末調整です。つまり今年は、月額表の側が改正前のままなので、改正の分が戻り額に上乗せされます。
年収別の目安(独身・毎月同額の月給のみ・賞与なし)
| 額面年収 | 源泉徴収の合計(月額表どおり) | 年調年税額(令和8年分) | 戻る額の目安 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 58,080円 | 27,400円 | 30,680円 |
| 360万円 | 75,840円 | 44,400円 | 31,440円 |
| 420万円 | 93,840円 | 64,300円 | 29,540円 |
| 480万円 | 132,000円 | 84,300円 | 47,700円 |
| 600万円 | 214,320円 | 149,200円 | 65,120円 |
| 720万円 | 355,920円 | 308,800円 | 47,120円 |
| 960万円 | 756,480円 | 744,200円 | 12,280円 |
| 1,200万円 | 1,250,028円 | 1,240,500円 | 9,528円 |
年収300万円〜420万円では、戻る額はどれも約3万円(29,540円〜31,440円)でほぼ横ばいです。年収480万円〜600万円では47,700円〜65,120円と大きくなり、年収720万円で47,120円、960万円で12,280円、1,200万円では9,528円と小さくなります。
戻る額の3つの内訳
同じ計算で基礎控除だけを差し替えた年税額をはさむと、戻る額をちょうど3つに分けられます(合計は表の「戻る額」に一致します)。
| 額面年収 | ① 令和8年度改正の分 | ② 基礎控除の加算の分 | ③ 月額表の計算方式の分 | 戻る額 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 8,200円 | 15,300円 | 7,180円 | 30,680円 |
| 360万円 | 8,100円 | 15,300円 | 8,040円 | 31,440円 |
| 420万円 | 8,200円 | 15,300円 | 6,040円 | 29,540円 |
| 480万円 | 21,600円 | 10,200円 | 15,900円 | 47,700円 |
| 600万円 | 36,800円 | 10,200円 | 18,120円 | 65,120円 |
| 720万円 | 8,200円 | 10,200円 | 28,720円 | 47,120円 |
| 960万円 | 8,100円 | 0円 | 4,180円 | 12,280円 |
| 1,200万円 | 9,400円 | 0円 | 128円 | 9,528円 |
- ① 令和8年度税制改正の分:基礎控除が合計所得金額に応じて最大104万円に引き上げられた分です(令和8・9年分)。改正前より控除が増える幅は所得帯で違い、年収300万円〜420万円では約8,000円台(戻る額の26〜28%)にとどまりますが、年収480万円〜600万円では21,600円〜36,800円になります。所得帯ごとの仕組みは基礎控除の引き上げのガイドにまとめています。
- ② 基礎控除の加算の分:月額表の基礎控除は、年58万円(月4万8,334円)として計算されます(月額表の電算機計算の特例、別表第三)。一方、改正前の令和8年分の基礎控除は、合計所得金額に応じて58万円に37万円・30万円・10万円・5万円を加算した額でした(国税庁のあらまし)。この加算は月々の源泉徴収に入っていないため、年末調整で戻ります。今回の改正がなくても戻る分で、年収300万円〜420万円では1万5,300円、480万円〜720万円では1万200円です。合計所得金額が655万円を超えると加算がないため、0円になります。
- ③ 月額表の計算方式の分:月額表は、給与所得控除を「社会保険料等を控除した後の月額」に当てはめて求めます(同じ電算機計算の特例、別表第一)。1年分の給与所得控除(年収に対する式)とは一致せず、このモデルでは月額表のほうが税額が多くなります。年収300万円〜420万円では6,040円〜8,040円ですが、年収720万円では28,720円と戻る額の6割超を占め、年収1,200万円ではほぼ0になります。賞与がある場合は賞与用の別の表が使われるため、この部分の大きさは変わります。
まとめると、今年戻る額のうち、令和8年度改正の分は年収300万〜420万円の独身では約4分の1にすぎません。残りは、毎年の年末調整でも戻る分(②と③)です。改正の影響が大きいのは、基礎控除の引上げ幅が大きい年収480万〜600万円あたりです。
家族がいる場合(配偶者と16〜18歳の子1人の例)
配偶者(収入なし)と16〜18歳の子が1人いる場合も、同じように計算できます。月額表では扶養親族等の数が2人として源泉徴収され、年末調整では配偶者控除38万円と扶養控除38万円を差し引きます。
| 額面年収 | 源泉徴収の合計 | 年調年税額 | ① 改正 | ② 加算 | ③ 月額表 | 戻る額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 420万円 | 55,080円 | 25,500円 | 8,200円 | 15,300円 | 6,080円 | 29,580円 |
| 600万円 | 136,680円 | 85,600円 | 22,800円 | 10,200円 | 18,080円 | 51,080円 |
| 720万円 | 219,120円 | 195,500円 | 4,100円 | 5,100円 | 14,420円 | 23,620円 |
家族がいると、月額表の源泉徴収も年調年税額も下がります。年収420万円では戻る額は独身とほぼ同じ(29,580円と29,540円)ですが、年収600万円では独身(65,120円)より少ない51,080円です。家族の控除の分だけ課税所得が下がり、基礎控除の増加分にかかる税率の帯が低くなるためです。
月額表に入らない控除は、その分がそのまま戻る額に上乗せされます。年収420万円の独身の場合、生命保険料控除を上限の12万円まで受けると年税額が約6,100円、地震保険料控除5万円で約2,500円、自分で払い込んだiDeCoの掛金が年27万6,000円なら約14,100円減ります。
今年の年末調整で見落としやすい3点
- 生命保険料控除の上限が最高6万円になる場合があります。令和8年分と令和9年分に限り、12月31日現在で23歳未満の扶養親族(16歳未満の子を含みます)がいる人は、新生命保険料(平成24年1月1日以後に結んだ一般の生命保険)の控除額の表が変わり、上限が4万円から6万円になります(租税特別措置法第41条の15の5、国税庁 タックスアンサー No.1140)。介護医療保険料・個人年金保険料の上限や、合計12万円の上限は変わりません。
- 19〜22歳の子のアルバイト収入の「壁」が動きました。給与収入136万円までは特定扶養親族(扶養控除63万円)、136万円超197万円以下は収入に応じて63万円から3万円に減る特定親族特別控除です(国税庁のあらまし、所得税法第84条の2)。令和8年12月1日以後に支払う給与から適用される所得要件の改正で新たに対象になった親族について控除を受けるには、扶養控除等(異動)申告書などの提出が必要です。
- 給与が850万円を超え、23歳未満の扶養親族がいる場合は、所得金額調整控除があります。(給与収入−850万円)×10%(1,000万円が上限)が給与所得から引かれます(租税特別措置法第41条の3の11、年末調整では第41条の3の12)。
この記事の前提と、確認できていないこと
- 表の年収は毎月同額の月給だけで、賞与・通勤手当などの非課税分・途中入社や退職・複数の勤務先は含みません。社会保険料は標準報酬月額の等級ではなく料率で概算しているため、実際の給与明細とは数百円〜数千円ずれることがあります。
- 住民税は含みません。住民税には別の控除額と計算があり、年末調整では計算されません。
- 国税庁の令和8年分「年末調整のしかた」は、2026年9月25日時点では確認できませんでした。計算の手順と端数処理は令和7年分の冊子(設例の全数字を当サイトのテストで再現済み)と、令和8年分の条文で確認しています。令和8年分の冊子を確認できたら、この記事を見直します。
- ②の「基礎控除の加算が月額表に入っていない」は、月額表の電算機計算の特例の基礎控除(月4万8,334円)と、月額表の数字が表と一致することの確認にもとづきます。個別の勤務先の給与計算ソフトの動作は確認していません。
自分の家族構成・保険料・賞与を入れて計算したい場合は、年末調整シミュレーションをご利用ください。一般的な情報であり、専門的助言ではありません。
出典
- 国税庁 — 令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし(令和8年11月までの源泉徴収に変更なし・年末調整での精算、改正前の基礎控除の表、扶養親族等の所得要件)
- 国税庁 — 令和8年分 源泉徴収税額表(月額表、18ページの電算機計算の特例 別表第一〜第四)
- 国税庁 — 令和7年分 年末調整のしかた(計算の手順・端数処理・設例。令和8年分の冊子は2026年9月25日時点で確認できず)
- 国税庁 タックスアンサー No.1140 — 生命保険料控除(令和8年分以降の23歳未満の扶養親族がいる場合の表)
- e-Gov法令検索 — 所得税法(別表第五・第84条の2・第86条・第190条)
- e-Gov法令検索 — 租税特別措置法(第29条の4・第41条の3の11・第41条の15の5・第41条の16の2)