基礎控除の引き上げは、いつ手取りに反映される?令和8年の給与明細と年末調整

令和8年度税制改正の基礎控除・給与所得控除の引き上げは、毎月の給与明細には令和9年1月まで反映されず、令和8年12月の年末調整で精算されます。年収別の減税額の目安も計算しました。

公開日 2026年9月21日 ・ 更新日 2026年10月4日

出典の確認・検証・訂正について

令和8年度税制改正で、所得税の基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられました。ところが、今年の給与明細を見ても、毎月の所得税はほとんど変わっていないはずです。これは間違いではありません。国税庁の資料によると、令和8年11月までの給与の源泉徴収は従来のままで、新しい控除は12月の年末調整でまとめて反映されます。毎月の源泉徴収額が変わるのは、令和9年1月以後に支払う給与からです。

この記事では、その仕組みと、減税額が年収によってどれだけ違うのかを、国税庁の公表資料をもとに整理します。

いつ、何が反映されるのか

  • 令和8年1月〜11月の給与・賞与:源泉徴収は改正前の税額表のまま。給与明細の所得税は変わりません。
  • 令和8年12月の年末調整:改正後の基礎控除と給与所得控除で1年間の税額を計算し、改正前の税額表で源泉徴収済みの税額と精算します。源泉徴収された税額が1年間の税額より多ければ、その差額が戻ります。
  • 令和9年1月1日以後に支払う給与:改正後の源泉徴収税額表が使われ、毎月の所得税が下がります。

令和9年1月の給与明細では、所得税はいくら下がるのか

国税庁は、基礎控除額と給与所得控除の最低保障額の引上げに伴い、令和9年分の源泉徴収税額表が改正されたとしています。令和9年分の月額表は2026年10月に公表されました。同じ給与(社会保険料等控除後の金額)で、令和8年分の月額表と令和9年分の月額表を比べると、次のとおりです(甲欄。扶養親族等の数は、本人以外の源泉控除対象の人数)。

社会保険料等控除後の月額扶養0人:令和8年分の表令和9年分の表差額(月)扶養2人:差額(月)
¥200,000¥4,340¥4,170-¥170-¥160
¥250,000¥6,110¥5,940-¥170-¥170
¥300,000¥7,930¥7,760-¥170-¥170
¥350,000¥11,730¥11,390-¥340-¥160
¥400,000¥15,650¥15,320-¥330-¥340
¥500,000¥28,190¥27,520-¥670-¥340
¥600,000¥45,390¥44,720-¥670-¥690

毎月の所得税の減り方は小さく、この表では月¥170から¥670、1年分に直しても約¥2,000から¥8,040です。差額は、月額表の全行のうち98%以上で、基礎控除を4万円増やしたときに減る税額(4万円÷12 × 税率 × 102.1%。税率5%で約170円、10%で約340円、20%で約680円)とほぼ一致します。つまり、月額表に入っているのは「基礎控除が58万円から62万円に4万円増えた分」までと読めます。下の表の年間の減税額(多くの年収で8,168円、最大3万6,756円)と比べると小さく、その差は、毎月の源泉徴収には入っていない基礎控除の上乗せ分(最大104万円)などによるもので、年末調整で精算されることになると考えられます(令和9年分の年末調整のしかたの公表後に確認します)。

これは、月額表の数字を並べて比べた結果と、その差の大きさから読み取ったことです。国税庁が月額表の計算方法として説明している内容を、確かめたものではありません。なお、令和9年1月1日から防衛特別所得税(所得税額の1%)が創設され、復興特別所得税の税率は2.1%から1.1%に下がります。国税庁は、合計の税率(2.1%)は変わらず、源泉徴収税額の計算方法にも変更は生じないとしているので(令和8年分 年末調整のしかた 44ページ)、上の差額に、この改正の影響は入りません。

何がどう変わったのか

基礎控除は、合計所得金額(給与だけの場合は、給与収入から給与所得控除を引いた額)に応じて、令和8・9年分の特例で次のように引き上げられました。

合計所得金額給与のみの場合の収入の目安改正前改正後
132万円以下約206万円以下95万円104万円
132万円超 336万円以下約206万円超 475万円以下88万円104万円
336万円超 489万円以下約475万円超 665万円以下68万円104万円
489万円超 655万円以下約665万円超 850万円以下63万円67万円
655万円超 2,350万円以下約850万円超 2,545万円以下58万円62万円

あわせて、給与所得控除の最低保障額も65万円から74万円に引き上げられました(給与収入が190万円以下の場合)。なお、住民税の基礎控除は別の制度で、この記事の対象外です。

年収別に見ると、減税額はかなり違う

表を見ると、控除が増える幅は所得帯ごとにまちまちです。合計所得金額が336万円超489万円以下(給与収入でおよそ475万〜665万円)の人は68万円から104万円へと36万円も増える一方、655万円超の人は4万円の増加にとどまります。本サイトの計算エンジンで、改正前と改正後の令和8年分の所得税(復興特別所得税を含む)を比べると次のとおりです。

額面年収改正前改正後年間の減税額
¥3,000,000¥35,633¥27,465¥8,168
¥4,000,000¥65,906¥57,738¥8,168
¥5,000,000¥119,355¥91,073¥28,282
¥6,000,000¥186,026¥149,270¥36,756
¥8,000,000¥443,829¥435,661¥8,168
¥10,000,000¥829,358¥821,190¥8,168
前提:独身・扶養なし・30歳・給与所得のみ、社会保険料は全国平均の料率による概算。改正前は国税庁が示す「改正前」の基礎控除と給与所得控除(令和7年度税制改正後の内容)で計算しています。配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除などがある場合、実際の減税額はこれと異なります。

この前提で細かく計算すると、給与収入がおよそ250万〜475万円の範囲では年間8,168円で横ばいです。およそ475万〜665万円の範囲では最大3万6,756円まで大きくなり、665万円を超えると再び8,000円台から9,000円台に戻ります。この差額が、12月の年末調整で戻ってくる金額の目安です。

給与明細と計算ツールの数字が合わない理由

当サイトの所得税計算や手取り計算は、令和8年分の1年間の税額を改正後のルールで計算します。一方、今年の給与明細の所得税は改正前の税額表で源泉徴収された金額です。そのため両者に差が出るのは自然で、その差額が年末調整で精算される、と考えると辻褄が合います。ただし、源泉徴収税額表は毎月の額面から機械的に税額を求める仕組みなので、年間の正確な税額とは完全には一致しません。実際の還付額は、扶養控除や各種の所得控除によっても変わります。

扶養している家族がいる場合の注意

基礎控除の引き上げにあわせて、扶養親族や配偶者の所得要件も引き上げられました。扶養親族等の場合、合計所得金額の要件が58万円以下から62万円以下になり、給与収入のみの場合の目安は123万円以下から136万円以下になります。令和8年12月1日以後に支払う給与から適用されるため、この改正で新たに要件を満たすことになった家族がいる場合は、年末調整に向けて「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要になります。

令和10年分以後はどうなるのか

上の表の「改正後」の基礎控除は、令和8年分と令和9年分だけの特例です。令和8年度税制改正の内容では、令和10年分以後は合計所得金額132万円以下で99万円、132万円超(2,350万円以下)で62万円となっており、現在の104万円よりも小さくなります。今後の税制改正で見直される可能性もあるため、令和10年分に近づいたら最新の国税庁の資料で確認してください。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、税務・法律・投資その他の専門的助言ではありません。金額は概算の目安で、制度や金利は変更されることがあります。個別の状況については、税理士・社会保険労務士・金融機関などの専門家にご相談ください。