「自分の業種は、平均よりどのくらい高いのか、低いのか」を知りたいときに使える公的な統計が、国税庁の「民間給与実態統計調査」(令和7年分)です。業種別と事業所の規模別の表が公表されています。この記事では、その表から平均給与を計算し直し、最高と最低の業種の差、男女の人数の割合をそろえたときの順位の変化、事業所の規模による違いを整理します。
この統計の数字が表すもの
- 民間の事業所に勤める給与所得者のうち、1年を通じて勤務した人が対象です。公務員、自営業の本人、年の途中で入社・退職した人は含みません。パート・アルバイトなどの正社員以外と、役員は含みます。
- 給与は、1年間に支払われた給料・手当・賞与の合計(額面)です。所得税や社会保険料を引く前の金額で、通勤手当などの非課税分は含みません。平均給与は、給与の総額を人数で割った値です。
- 業種は、日本標準産業分類にもとづく14の分類です。事業の種類の分類で、営業や技術などの仕事の内容(職種)の分類ではありません。
- 抽出した事業所への調査から全体を推計する標本調査なので、数字は推計値です。複数の会社から給与をもらっている人は、会社ごとに別の人として数えられます。
業種別の平均給与ランキング
| 業種 | 人数 | 平均給与 | 男性 | 女性 | 女性の割合 | 800万円超の割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 18万人 | 854万円 | 888万円 | 690万円 | 16.9% | 47.2% |
| 金融業,保険業 | 130万人 | 726万円 | 907万円 | 527万円 | 47.8% | 31.7% |
| 情報通信業 | 226万人 | 682万円 | 752万円 | 520万円 | 30.3% | 27.9% |
| 建設業 | 411万人 | 590万円 | 646万円 | 374万円 | 20.6% | 18.9% |
| 製造業 | 926万人 | 573万円 | 655万円 | 372万円 | 28.9% | 18.8% |
| 学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業 | 264万人 | 568万円 | 699万円 | 424万円 | 47.5% | 19.7% |
| 不動産業,物品賃貸業 | 128万人 | 512万円 | 633万円 | 360万円 | 44.1% | 15.4% |
| 複合サービス事業 | 107万人 | 509万円 | 592万円 | 369万円 | 37.2% | 11.4% |
| 運輸業,郵便業 | 306万人 | 482万円 | 521万円 | 333万円 | 20.7% | 8.5% |
| 医療,福祉 | 750万人 | 424万円 | 571万円 | 369万円 | 72.6% | 5.3% |
| 卸売業,小売業 | 819万人 | 413万円 | 548万円 | 274万円 | 49.1% | 8.7% |
| サービス業 | 783万人 | 402万円 | 486万円 | 301万円 | 45.5% | 7.0% |
| 農林水産・鉱業 | 49万人 | 394万円 | 454万円 | 308万円 | 41.5% | 6.7% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 247万人 | 276万円 | 369万円 | 198万円 | 54.6% | 2.8% |
平均給与が最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の854万円、次いで金融業,保険業の726万円です。最も低い宿泊業,飲食サービス業は276万円で、最高の業種の約3.1倍の差があります。これは、国税庁の報告書に書かれている最高・次点・最低と同じです。
分布を見ても違いは大きく、年収が800万円を超える人の割合は、電気・ガス・熱供給・水道業で47.2%、宿泊業,飲食サービス業で2.8%です。宿泊業,飲食サービス業では、年収100万円以下の人が27.9%います。なぜ低いのか(短時間で働く人が多いのか、賃金水準が低いのか)は、この統計の表からはわかりません。
男女の人数の割合をそろえると、順位はどう変わるか
業種ごとに、男性と女性の人数の割合は大きく違います。女性の割合は、医療,福祉で72.6%、電気・ガス・熱供給・水道業では16.9%です(全体では43.2%)。男性より女性の平均給与が低いので(次の節で確認します)、女性の割合が高い業種は、平均給与が低く出やすくなります。そこで、各業種の男性の平均と女性の平均を、全体の男女の人数の割合(男性56.8%・女性43.2%)で加重平均して、男女の構成をそろえた平均給与を計算しました。
| 業種 | そのままの平均 | 男女の構成をそろえた平均 | 順位(そのまま → そろえた) |
|---|---|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 854万円 | 802万円 | 1位 → 1位 |
| 金融業,保険業 | 726万円 | 743万円 | 2位 → 2位 |
| 情報通信業 | 682万円 | 652万円 | 3位 → 3位 |
| 建設業 | 590万円 | 529万円 | 4位 → 6位 |
| 製造業 | 573万円 | 533万円 | 5位 → 5位 |
| 学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業 | 568万円 | 580万円 | 6位 → 4位 |
| 不動産業,物品賃貸業 | 512万円 | 515万円 | 7位 → 7位 |
| 複合サービス事業 | 509万円 | 496万円 | 8位 → 8位 |
| 運輸業,郵便業 | 482万円 | 440万円 | 9位 → 10位 |
| 医療,福祉 | 424万円 | 484万円 | 10位 → 9位 |
| 卸売業,小売業 | 413万円 | 430万円 | 11位 → 11位 |
| サービス業 | 402万円 | 406万円 | 12位 → 12位 |
| 農林水産・鉱業 | 394万円 | 391万円 | 13位 → 13位 |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 276万円 | 295万円 | 14位 → 14位 |
変わるのは、順位の一部です。医療,福祉は、424万円(10位)から484万円(9位)になり、運輸業,郵便業(482万円 → 440万円)を上回ります。建設業と製造業も入れ替わります(529万円と533万円で、差は小さいです)。一方で、最高の電気・ガス・熱供給・水道業と最低の宿泊業,飲食サービス業は、そろえても変わらず、差も802万円と295万円と大きいままです。
どの業種でも、男性の平均のほうが高い
14の業種すべてで、男性の平均給与は女性より高くなっています。差が最も大きいのは金融業,保険業で、男性907万円、女性527万円と、380万円の差があります。次いで製造業の283万円です。差が最も小さいのは農林水産・鉱業の146万円ですが、男性の平均自体も454万円と、14業種の中で低いほうです。男女の差の理由は、この表からはわかりません。年齢別の男女差は、年齢別の平均年収のガイドにまとめています。
事業所の規模別の平均給与
| 事業所の従事員数 | 人数 | 平均給与 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜4人 | 269万人 | 380万円 | 465万円 | 280万円 |
| 5〜9人 | 302万人 | 414万円 | 512万円 | 293万円 |
| 10〜29人 | 685万人 | 454万円 | 548万円 | 330万円 |
| 30〜99人 | 835万人 | 455万円 | 542万円 | 339万円 |
| 100〜499人 | 1,078万人 | 476万円 | 569万円 | 350万円 |
| 500〜999人 | 432万人 | 510万円 | 620万円 | 364万円 |
| 1,000〜4,999人 | 774万人 | 556万円 | 685万円 | 377万円 |
| 5,000人以上 | 787万人 | 548万円 | 710万円 | 341万円 |
事業所の従事員数が多いほど、平均給与は高くなる傾向があります。1〜4人の事業所の380万円に対して、1,000〜4,999人では556万円です。ただし、一番上の区分の5,000人以上は548万円で、1,000〜4,999人よりわずかに低くなっています(報告書にも同じ数字が印刷されています)。男性は5,000人以上で710万円と最も高い一方、女性は341万円で、500〜999人(364万円)や1,000〜4,999人(377万円)より低くなっています。ここでの規模は、給与を支払った事業所ごとの従事員数です(国税庁は、事業所の属する企業の規模を、別の区分で公表しています)。
平均を、自分の年収と比べるときの注意
- 平均は、真ん中の人の年収(中央値)ではありません。年収の高い人が平均を押し上げます。電気・ガス・熱供給・水道業では、平均854万円に対して、階級別の人数から推定した中央値は約772万円です(推定値です。階級の中の位置は、統計表にないため、推定しています)。
- 業種の中でも、年収は大きく違います。同じ業種の中での順位は、年収偏差値・上位何%の計算の「比べる相手」で、業種や事業所の規模を選んで調べられます。
- この平均は、額面の年収です。手取りで比べるときは、手取り計算シミュレーションで、額面から手取りを計算できます。
- この統計は、事業所が支払った給与を数えたもので、職種、年齢、地域、勤務時間は区別していません。業種の平均より低くても高くても、それだけで良し悪しはわかりません。
データは、国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分(1年を通じて勤務した給与所得者)です。この調査は毎年9月に公表されており、令和7年分は令和8年9月に公表されました。令和8年分が公表された時点で、この記事の数字を更新します(最終確認:2026年10月1日)。