4〜6月の残業代で、社会保険料は1年間いくら増える?「支払われた月」で決まる定時決定と、等級の階段・増えた分の年金(東京・月給別の計算)

毎年7月に、4・5・6月に支払われた報酬の平均で標準報酬月額が決まり、9月から1年間その等級で保険料がかかります。東京・40歳未満で基本の月給が30万円の人が、4〜6月だけ毎月1万円(3か月で30,000円)多く支払われると、23等級に上がり、1年間で本人の保険料が34,056円、会社が34,920円増えます。等級の階段で同じ1万円が0円にも34,056円にもなる表、増えた分が将来の年金(年約1,315円)と傷病手当金にどう結びつくか、年間平均で決める特例まで、協会けんぽの令和8年度保険料額表で計算しました。

公開日 2026年10月14日

出典の確認・検証・訂正について

「4・5・6月は残業を減らしたほうがいい」という話は、毎年この時期に出ます。毎年7月に、4・5・6月の3か月の報酬の平均で標準報酬月額が決め直され、9月から翌年8月までの1年間、その等級で保険料がかかるからです(日本年金機構「定時決定」)。このガイドは、東京・40歳未満・一般の事業の人を例に、その仕組みで保険料がいくら変わるのかを、協会けんぽの令和8年度保険料額表のとおりに計算したものです。

基本の月給が30万円(22等級)の人が、4・5・6月だけ、残業代などで毎月1万円ずつ多く支払われると、3か月の追加の報酬は30,000円です。月平均が31万円になり、23等級(標準報酬月額32万円)に上がって、9月からの1年間で本人の保険料が34,056円、会社の保険料が34,920円増えます。追加の報酬より、1年間の保険料のほうが大きくなります。

「4月・5月・6月」は、働いた月ではなく、支払われた月

定時決定で使うのは、4月・5月・6月に「支払われた」報酬です。日本年金機構の算定基礎届の様式には、「支給月とは、給与の対象となった計算月ではなく実際に給与の支払いを行った月」と書かれています。たとえば月末締めの翌月25日払いなら、4月に支払われる給与は、3月に働いた分です。残業代を月の締めの翌月に払う会社なら、3月・4月・5月の残業が、定時決定の対象になります。

  • 報酬に含まれるのは、基本給のほか、残業代、通勤手当、各種の手当、現物給与です(日本年金機構の事例集)。通勤手当も、毎月の報酬に入ります。
  • 傷病手当金、解雇予告手当、退職手当などは、報酬に含まれません。賞与は、標準報酬月額とは別に、標準賞与額(1,000円未満切り捨て)にそれぞれ保険料がかかります。
  • 支払基礎日数が17日未満の月は、平均に入れません(月給の人は、その月の暦日数)。4・5・6月のどの月も17日以上なら、3か月の合計を3で割ります。
  • 定時決定のほかに、随時改定があります。昇給・降給などで固定的な賃金に変動があり、継続した3か月の平均が従前の報酬月額と比べて大きくずれたときに、途中でも決め直されます(日本年金機構)。条件は固定的な賃金の変動なので、残業代のように月ごとに変わる賃金が増えただけなら、随時改定にはならず、翌年の定時決定で反映されます。

標準報酬月額は階段。同じ1万円でも、0円にも34,056円にもなる

標準報酬月額は、報酬を段に分けた表です。標準報酬月額の刻みは、20万〜38万円のあたりで2万円、それより上では3万円以上、20万円より下では1万円前後です。段の中で報酬が少し増えても保険料は変わりませんが、段を越えた瞬間に、1段ぶんの保険料が1年間かかります。たとえば基本の月給が289,000円(21等級の上のほう)の人が1万円増えると22等級に上がり、291,000円(22等級の下のほう)の人が同じ1万円増えても、22等級のままです。

東京・40歳未満・一般の事業で、4・5・6月の月平均が増えたときの、9月から翌年8月までの12か月で増える本人負担(健康保険料・子ども・子育て支援金・厚生年金保険料)です。1段(標準報酬月額が2万円上がる、20万〜38万円あたり)あたり、本人34,056円、会社34,920円です。

基本の月給(毎月同じ)4〜6月の月平均が1万円増える4〜6月の月平均が3万円増える4〜6月の月平均が5万円増える
200,000円(17等級)34,056円(17→18等級)68,112円(17→19等級)102,168円(17→20等級)
250,000円(20等級)0円(等級は同じ)34,056円(20→21等級)68,112円(20→22等級)
289,000円(21等級)34,056円(21→22等級)68,112円(21→23等級)102,168円(21→24等級)
291,000円(22等級)0円(等級は同じ)34,056円(22→23等級)68,112円(22→24等級)
300,000円(22等級)34,056円(22→23等級)68,112円(22→24等級)102,168円(22→25等級)
350,000円(25等級)0円(等級は同じ)34,056円(25→26等級)85,140円(25→27等級)
400,000円(27等級)0円(等級は同じ)51,084円(27→28等級)51,084円(27→28等級)

基本の月給が300,000円の人は、月平均が3万円増えると24等級(標準報酬月額34万円)になり、2段ぶんの68,112円です。400,000円の等級(27等級)は段の幅が3万円(41万円)なので、3万円増えると1段ぶんの51,084円、5万円増えても同じ28等級(44万円)で51,084円です。ここに雇用保険料(実際の給与にかかる)と、賞与の保険料は入っていません。

増えた保険料は、何になるのか

厚生年金の標準報酬月額が2万円上がると、老齢厚生年金(報酬比例部分)は、平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 被保険者期間の月数で計算されるので、その年(12か月)ぶんで、毎年およそ1,315円、年金が増えます(日本年金機構の令和8年度の老齢年金ガイド。将来の再評価やスライドは入れていない、今の価値の目安です)。本人が払った厚生年金保険料の増加は21,960円なので、受け取る年金の増加だけで取り戻すには、約16.7年かかります。会社が払った分も含めて比べると、約33.4年です。

健康保険料と子ども・子育て支援金の増加(本人12,096円)は、老齢年金には結びつきません。ただし、傷病手当金(病気やけがで会社を休み、給与が出ないとき)は、標準報酬月額の直近12か月の平均 ÷ 30 × 2/3 が1日あたりの額なので、標準報酬月額が高いほど増えます。30万円で6,667円、32万円で7,113円です(協会けんぽの計算例の端数処理)。実際に休むかどうかは分からないので、保険料の増加の代わりになるかどうかは、人によって違います。

この数字は、「4・5・6月だけ報酬が増えて、ほかの月は変わらない」ときの話です。毎月の残業代が一年中同じなら、4・5・6月の平均も年間の平均も同じなので、定時決定は、その実際の報酬の水準に合わせて決まるだけです。

「年間の平均で決める」特例

4・5・6月の月平均と、前年7月から当年6月までの年間の月平均で、標準報酬月額が2等級以上ちがうときに、事業主が「年間報酬の平均で算定する」ことを申し立てる方法があります。申立書には、被保険者の同意と、例年の状況を書く欄があり、「標準報酬月額は、年金や傷病手当金など、被保険者が受ける保険給付の額にも影響を及ぼす」と注意書きがあります(日本年金機構)。使えるかどうかは、会社が年金事務所に確認することです。

このガイドが計算していないこと

  • 東京・40歳未満・一般の事業の例です。ほかの都道府県は健康保険料率が違い、40〜64歳は介護保険料が加わります(社会保険料の計算ツールで変えられます)。
  • 9月からの12か月に、昇給・随時改定・賞与の変化がない前提です。年の途中で入社・退職した人、産前産後・育児休業中の免除、短時間労働者の17日未満の月、健康保険組合・共済組合の保険料は計算していません。
  • 残業代が増えた分の所得税・住民税は含めていません。厚生年金の増加は、乗率5.481/1000だけの目安で、加給年金・経過的加算・在職老齢年金などは入っていません。
  • 残業を減らす・増やすという判断は、人によって違います。ここに書いたのは、制度がどう動くかの計算で、「減らすべき」「増やすべき」という意味ではありません。実際の標準報酬月額は、会社が届け出た等級(給与明細や標準報酬月額決定通知書)で確認してください。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、税務・法律・投資その他の専門的助言ではありません。金額は概算の目安で、制度や金利は変更されることがあります。個別の状況については、税理士・社会保険労務士・金融機関などの専門家にご相談ください。