退職金の税金は勤続年数でどう変わる?退職所得控除の「20年の境目」と申告書の落とし穴

退職金の税金は勤続年数で大きく変わります。退職金2,000万円の場合、勤続20年なら約139万円、30年なら約41万円、38年ならゼロ。退職所得控除の仕組みと、申告書を出さないと20.42%が引かれる点を計算で確かめます。

公開日 2026年9月21日

退職金は、給与や賞与と違って、勤続年数が長いほど税金が軽くなる仕組みになっています。同じ2,000万円の退職金でも、 勤続20年なら約139万円、勤続30年なら約41万円、 勤続38年なら税金はかかりません。この記事では、その理由である 「退職所得控除」の仕組みを、国税庁の資料と本サイトの計算エンジンで確かめます。

退職所得控除額のルール

退職金にかかる税金は、まず勤続年数(1年未満の端数は1年に切り上げ)から退職所得控除額を求めることから始まります (国税庁 No.1420)。

  • 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
  • 障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上の額に100万円を加算
勤続年数退職所得控除額
5¥2,000,000
10¥4,000,000
15¥6,000,000
20¥8,000,000
21¥8,700,000
25¥11,500,000
30¥15,000,000
35¥18,500,000
38¥20,600,000

勤続20年から21年になると、控除額は¥8,000,000から¥8,700,000へと¥700,000増えます。20年までは 1年あたり40万円ずつ増えるのに対し、20年を超えると1年あたり70万円ずつ増えるためです。「20年の境目」を超えたあとの 1年は、控除の面でとくに大きな意味があります。

退職金2,000万円の税金を、勤続年数別に比べる

退職金からこの控除額を引いた金額の2分の1が課税の対象になり、その金額に所得税(復興特別所得税を含む)と住民税 (市町村民税6%・道府県民税4%)がかかります。2,000万円の退職金で計算すると次のとおりです。

勤続年数退職所得控除額課税退職所得金額所得税+住民税手取り
20¥8,000,000¥6,000,000¥1,388,722¥18,611,278
25¥11,500,000¥4,250,000¥856,372¥19,143,628
30¥15,000,000¥2,500,000¥405,702¥19,594,298
35¥18,500,000¥750,000¥113,287¥19,886,713
38¥20,600,000¥0¥0¥20,000,000

勤続年数が長くなるほど控除額が退職金に近づくため、課税される金額が急に小さくなります。勤続38年では控除額が¥20,600,000と退職金を上回り、税金はゼロです。自分の場合の金額は退職金の税金・手取り計算で確認できます。

前提:令和8年分、役員等以外で勤続5年超の一般退職手当等、障害退職ではない、「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合。 同じ年に複数の退職金がある場合などは考慮していません。

勤続5年以下の場合は「2分の1」が使えない部分がある

役員等以外の人で勤続年数が5年以下の退職金(短期退職手当等)は、退職金から退職所得控除額を引いた額のうち300万円を 超える部分に、2分の1の計算が使えません(国税庁 No.2740、令和4年1月1日以後)。住民税でも同じ扱いです。 勤続3年の場合を、仮にすべて2分の1で計算したときと比べます。

退職金(勤続3年)課税退職所得金額所得税+住民税仮にすべて2分の1なら
¥4,000,000¥1,400,000¥211,470¥211,470
¥6,000,000¥3,300,000¥567,382¥385,492
¥8,000,000¥5,300,000¥1,175,782¥597,802
¥10,000,000¥7,300,000¥1,794,903¥902,002

退職所得控除後の金額が300万円以下なら差は出ませんが、それを超えると、超えた部分が丸ごと課税されるため税額が 大きく変わります。役員等の勤続年数が5年以下の場合(特定役員退職手当等)は、2分の1の計算そのものが使えません。

「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと

この申告書を退職金の支払者に提出しないと、税額の計算ができないため、支払額の20.42%が所得税として源泉徴収されます (国税庁 No.2732)。国税庁の計算例では、退職金800万円・勤続10年2か月の場合、申告書があれば源泉徴収税額は91,890円ですが、 なければ1,633,600円です。

本サイトの計算で、2,000万円・勤続25年の場合にあてはめると、申告書を出さなければ¥4,084,000が 源泉徴収されますが、実際の所得税は¥431,372です。差額は確定申告で精算して取り戻せますが、 いったん大きな金額が引かれ、手続きも必要になります。退職時に申告書を出すのを忘れないようにしましょう。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、税務・法律・投資その他の専門的助言ではありません。金額は概算の目安で、 制度や金利は変更されることがあります。個別の状況については、税理士・社会保険労務士・金融機関などの専門家にご相談ください。