国民年金保険料の免除や納付猶予、学生納付特例を受けた期間は、あとから保険料を納めて(追納して)、老齢基礎年金を増やせます。日本年金機構は、1年分追納すると、全額免除の期間なら年金が年約1万円、納付猶予や学生納付特例の期間なら年約2万円増えると説明しています。では、その追納額は、年金で何年受け取れば取り戻せるのでしょうか。日本年金機構の追納額の表と、国民年金法・施行令の条文を使って計算しました。
同じ追納額で、年金の増え方が2倍違う理由
老齢基礎年金は、納付した月を1、全額免除の月を1/2、納付猶予・学生納付特例と未納の月を0として数えた月数を、480か月で割った割合で決まります(国民年金法第27条)。全額免除の月は、国庫負担(税金)の分として1/2がすでに数えられているので、追納で増えるのは残りの1/2だけです。納付猶予・学生納付特例の月は0だったので、追納すると1まるごと増えます。令和8年度の満額は847,300円なので、1か月の追納で増える年金は、全額免除なら約883円、納付猶予なら約1,765円です。
| 追納する12か月(令和7年度分) | 追納額 | 年金の増額(年) | 取り戻す年数と年齢(税の減りを見込まない) | 住民税の控除を見込む | 所得税10%+住民税を見込む |
|---|---|---|---|---|---|
| 全額免除だった月 | 210,120円 | 10,592円 | 19.8年 → 84.8歳 | 82.9歳 | 80.8歳 |
| 納付猶予・学生納付特例だった月 | 210,120円 | 21,183円 | 9.9年 → 74.9歳 | 73.9歳 | 72.9歳 |
半額免除や4分の3免除だった月も、追納額と年金の増額がどちらも比例して小さくなるので、全額免除と同じ年齢(税の減りを見込まない場合は約85歳)になります。分かれ目は「免除か猶予・学生納付特例か」で、猶予・学生納付特例の追納のほうが、年金が増える効率が約2倍です。
社会保険料控除で、元が取れる年齢は2〜4歳早まる
追納した保険料は、全額が社会保険料控除の対象です(日本年金機構)。その年の所得税と住民税が、追納額に税率を掛けた分だけ減ります。上の表のとおり、全額免除だった月は、住民税の控除だけで約2歳、所得税率10%の人では約4歳、取り戻す年齢が早まります。納付猶予・学生納付特例だった月は、もともと早いので、約1歳と約2歳です。1年分の追納でも、所得税10%+住民税では約4万円が税として減る計算です。ただし、課税される所得がない人は、控除の効果がありません。ツールでは、税率を選んで正味の負担を確かめられます。
古い月ほど加算額がつくのに、元が取れる年齢はほぼ同じ
免除・猶予の承認を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が付きます(国民年金法第94条第3項、施行令第10条)。令和8年度中に追納する場合、加算の率は平成28年度分の3.6%から令和5年度分の1.5%まで。令和6年度分と令和7年度分には加算がありません。それでも、古い月の追納額が高くなるとは限りません。当時の保険料のほうが安かったからです。
| 保険料年度 | 当時の保険料(月) | 加算の率 | 1か月の追納額 | 12か月の追納額 | うち加算額 | 元が取れる年齢(全額免除) | 元が取れる年齢(猶予・学生納付特例) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成28年度 | 16,260円 | 3.6% | 16,850円 | 202,200円 | 7,080円 | 84.1歳 | 74.5歳 |
| 平成29年度 | 16,490円 | 3.5% | 17,070円 | 204,840円 | 6,960円 | 84.3歳 | 74.7歳 |
| 平成30年度 | 16,340円 | 3.4% | 16,900円 | 202,800円 | 6,720円 | 84.1歳 | 74.6歳 |
| 令和元年度 | 16,410円 | 3.3% | 16,950円 | 203,400円 | 6,480円 | 84.2歳 | 74.6歳 |
| 令和2年度 | 16,540円 | 3.2% | 17,070円 | 204,840円 | 6,360円 | 84.3歳 | 74.7歳 |
| 令和3年度 | 16,610円 | 3.0% | 17,110円 | 205,320円 | 6,000円 | 84.4歳 | 74.7歳 |
| 令和4年度 | 16,590円 | 2.4% | 16,990円 | 203,880円 | 4,800円 | 84.2歳 | 74.6歳 |
| 令和5年度 | 16,520円 | 1.5% | 16,770円 | 201,240円 | 3,000円 | 84.0歳 | 74.5歳 |
| 令和6年度 | 16,980円 | なし | 16,980円 | 203,760円 | 0円 | 84.2歳 | 74.6歳 |
| 令和7年度 | 17,510円 | なし | 17,510円 | 210,120円 | 0円 | 84.8歳 | 74.9歳 |
最も古い平成28年度分は、12か月で加算額が7,080円つきますが、追納額は202,200円で、令和7年度分の210,120円より安くなります。元が取れる年齢は、全額免除の月で84.0歳から84.8歳、納付猶予・学生納付特例の月で74.5歳から74.9歳の範囲で、年度による差は1歳未満です。「古い月は加算が付くから割に合わない」とも、「古いほど得」とも言えません。
1年待つと、加算の率はどの年度も1.5ポイント上がった
加算の率は、年度ごとに政令(施行令第10条)で決まります。令和7年度中に有効だった版(令和7年4月1日・10月1日施行)と、令和8年度中の版(令和8年4月1日・10月1日施行)を比べると、同じ保険料年度の率は、令和8年度中の追納のほうがどの年度も1.5ポイント高くなっていました。令和7年度中なら加算がなかった令和5年度分にも、令和8年度中は1.5%がつきます。12か月の追納額では、令和元年度分が2,880円、ほかの年度の分は3,000円の差です(10円未満の端数処理のため)。
| 保険料年度 | 令和7年度中に追納した場合の率 | 令和8年度中の率 | 12か月の追納額(令和7年度中) | 12か月の追納額(令和8年度中) | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 平成28年度 | 2.1% | 3.6% | 199,200円 | 202,200円 | 3,000円 |
| 平成29年度 | 2.0% | 3.5% | 201,840円 | 204,840円 | 3,000円 |
| 平成30年度 | 1.9% | 3.4% | 199,800円 | 202,800円 | 3,000円 |
| 令和元年度 | 1.8% | 3.3% | 200,520円 | 203,400円 | 2,880円 |
| 令和2年度 | 1.7% | 3.2% | 201,840円 | 204,840円 | 3,000円 |
| 令和3年度 | 1.5% | 3.0% | 202,320円 | 205,320円 | 3,000円 |
| 令和4年度 | 0.9% | 2.4% | 200,880円 | 203,880円 | 3,000円 |
| 令和5年度 | なし | 1.5% | 198,240円 | 201,240円 | 3,000円 |
3,000円は、12か月分の追納額(約20万円)の約1.5%です(保険料の約1.5%の率の差が、そのまま額の差になります)。令和9年度中の率はこのページの時点で決まっておらず、上がるとは限りません。1年待つと差が出る、という事実だけを、2つの版の比較から読み取れます。
追納できる一番古い月は、毎月1か月ずつ進む
追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の期間で、古い月から順に納めます(第94条)。日本年金機構の例では、令和8年7月に追納する場合は平成28年7月分以降です。この数え方で、承認の月ごとに追納できる一番古い月を並べると、次のとおりです。
| 追納が承認された月 | 追納できる一番古い月 |
|---|---|
| 令和8年11月 | 平成28年11月分 |
| 令和9年3月 | 平成29年3月分 |
| 令和9年4月 | 平成29年4月分 |
| 令和10年4月 | 平成30年4月分 |
承認の月が令和9年3月までなら、平成29年3月分(平成28年度の最後の月)が対象に残り、令和9年4月からは平成29年4月分が一番古くなって、平成28年度分は全部対象外になります。平成28年度分の12か月がすべて対象だったのは、承認の月が令和8年4月までです。申込書を出してから納付書が届くまで日数がかかるので、日本年金機構は期限の直前の申込みを避けるよう呼びかけています。
この計算が前提にしていること
65歳から受け取り、年金の額は今の円で一定とし、利息・物価の上昇・年金の改定は入れていません。老齢基礎年金は昭和31年4月2日以後生まれの人の令和8年度の額で、480か月の枠に収まる範囲(ほかの期間が240か月)で計算しています。追納を勧めるものではなく、受け取る期間の長さ(平均寿命)、手元の資金の使い道、ほかの備えとの比較は、人によって違います。追納できるのは、老齢基礎年金の受給権者ではない人に限られます。自分の記録と所得に合わせた計算は、国民年金保険料の免除・納付猶予・追納の計算でできます。
出典
- 日本年金機構 — 国民年金保険料の追納制度(2026年4月1日更新。令和8年度中に追納する際の保険料額の表、承認された月の前10年以内、翌年度から3年度目以降は加算、1年分で全額免除は年約1万円・納付猶予や学生納付特例は年約2万円、社会保険料控除、老齢基礎年金を受け取れる人は追納できない)
- 日本年金機構 — 国民年金保険料の変遷(年度ごとの保険料。追納額の検算に使用)
- 日本年金機構 — 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(全額免除の期間は年金額の2分の1、納付猶予は年金額に反映されない、令和8年度の老齢基礎年金847,300円)
- e-Gov法令検索 — 国民年金法(第17条 年金給付の額の円未満四捨五入、第27条 老齢基礎年金の額、第94条 追納は承認の月の前10年以内・古い月から・当時の保険料に政令の額を加算)
- e-Gov法令検索 — 国民年金法施行令(第10条 追納の加算額の率。令和7年10月1日施行の版(令和7年度中の追納の率)と、令和8年4月1日・10月1日施行の版(令和8年度中の率。同じ表)を読んで、年度ごとの率を比べた)