高額療養費は、ひと月に窓口で払った医療費の自己負担が、年齢と所得で決まる限度額を超えたときに、超えた分が戻る制度です。令和8年8月に、月額の限度額が上がり、新しく「年間上限」ができました。令和9年8月には、所得の区分が4つから12に細かくなります(厚生労働省)。この記事は、70歳未満の人が、治療の長さで自己負担がどう変わるかを、条文と厚生労働省の表から、本サイトの計算エンジンで求めたものです。
結論から言うと、月額の限度額は、令和8年8月に区分ごとに約7%(住民税非課税は約4%)上がりました。年収約370万〜約770万円の人が、医療費100万円(窓口30万円)の月を過ごすと、自己負担は87,430円から92,940円になります。この増え方は、治療が3か月続くと16,530円になり、そこで止まります(4か月目からの多数回該当の額は据え置かれたため)。一方、長く続く治療は、年間上限で頭打ちになり、令和8年7月までより自己負担が減ります。窓口30万円の治療なら、年収約370万〜約770万円の人は10か月以上続いたとき、年間上限の53万円で減ります。
自分の区分と医療費で計算したい場合は、高額療養費の自己負担限度額・払い戻しの計算をご利用ください。
月額の限度額は、区分ごとに約7%上がった
令和8年8月から、月額の限度額は、一人当たり医療費の伸びに応じて引き上げられました(厚生労働省)。限度額は「基本の額 + (医療費の総額 − 基準額) × 1%」で、基本の額が上がっています。下の表は、令和8年8月の見直しの4つの区分と、住民税非課税の基本の額です。
| 区分(70歳未満) | 令和8年7月まで | 令和8年8月から | 上がり幅 | 上がった割合 |
|---|---|---|---|---|
| 年収約1,160万円〜(標準報酬月額83万円〜) | 252,600円 | 270,300円 | +17,700円 | 7.0% |
| 年収約770万〜約1,160万円(53万〜79万円) | 167,400円 | 179,100円 | +11,700円 | 7.0% |
| 年収約370万〜約770万円(28万〜50万円) | 80,100円 | 85,800円 | +5,700円 | 7.1% |
| 年収約370万円まで(26万円以下) | 57,600円 | 61,500円 | +3,900円 | 6.8% |
| 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 | +1,500円 | 4.2% |
1か月だけなら増える。3か月で増えが止まる
入院などで医療費の総額が100万円(窓口30万円)になった月は、年収約370万〜約770万円の人なら、令和8年7月までは87,430円、令和8年8月からは92,940円です(厚生労働省は「約9.3万円」と説明しています)。差は5,510円です。この治療が2か月続けば11,020円、3か月続けば16,530円と、毎月同じだけ増えます。
4か月目からは、多数回該当(直近12か月に高額療養費が出た月が3か月以上)で限度額が下がりますが、その額(年収約370万〜約770万円で44,400円)は、令和8年8月の見直しでも変わりませんでした。そのため、4か月目以降の月は、見直しの前後で同じ額です。増えは、最初の3か月分の合計で止まります。
窓口30万円の治療が何か月続くと、減る側に回るか
毎月の窓口負担が30万円(医療費100万円)の治療が、8月から何か月続くかで、令和8年8月からのルールの年間の自己負担が、令和8年7月までのルールより何円多いか(+)、少ないか(−)を求めました。直前の12か月に高額療養費が出ていない人の場合です。
| 治療が続く月数 | 年収約1,160万円〜 | 年収約770万〜約1,160万円 | 年収約370万〜約770万円 | 年収約200万〜約370万円 | 年収約200万円まで | 住民税非課税 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1か月 | +17,110円 | +11,310円 | +5,510円 | +3,900円 | +3,900円 | +1,500円 |
| 2か月 | +34,220円 | +22,620円 | +11,020円 | +7,800円 | +7,800円 | +3,000円 |
| 3か月 | +51,330円 | +33,930円 | +16,530円 | +11,700円 | +11,700円 | +4,500円 |
| 6か月 | +51,330円 | +33,930円 | +16,530円 | +11,700円 | +11,700円 | +4,500円 |
| 9か月 | +51,330円 | +33,930円 | +1,310円 | +11,700円 | −29,200円 | +4,500円 |
| 10か月 | −63,240円 | −56,460円 | −43,090円 | +11,700円 | −73,600円 | +4,500円 |
| 11か月 | −203,340円 | −149,460円 | −87,490円 | +2,000円 | −118,000円 | −13,000円 |
| 12か月 | −343,440円 | −242,460円 | −131,890円 | −42,400円 | −162,400円 | −37,600円 |
年収約370万〜約770万円の人は、9か月続いたときは、年間上限の53万円が、令和8年7月までの合計(多数回該当を使った528,690円)を1,310円だけ上回り、10か月目から減ります。12か月続くと131,890円減ります。年収約1,160万円〜(年間上限168万円)と年収約770万〜約1,160万円(年間上限111万円)の人は、増えが大きい(9か月で51,330円、33,930円)まま、10か月目から減ります。年収約200万〜約370万円は、月額が61,500円と低く、年間上限は同じ53万円なので、減るのは12か月目からです(11か月では+2,000円)。年収約200万円まで(標準報酬月額15万円以下)は年間上限が41万円なので9か月目から(令和8年度は保険者の確認が必要)、住民税非課税は29万円なので11か月目から減ります。
年間上限は、「多数回該当を使い続けたときの12か月分」より低く設定されています。厚生労働省も、年間上限の月額の平均が、多数回該当の額を下回る水準にしたと説明しています。
| 区分(70歳未満) | 年間上限 | 年間上限 ÷ 12 | 多数回該当の額(月) |
|---|---|---|---|
| 年収約1,160万円〜 | 1,680,000円 | 140,000円 | 140,100円 |
| 年収約770万〜約1,160万円 | 1,110,000円 | 92,500円 | 93,000円 |
| 年収約370万〜約770万円 | 530,000円 | 44,167円 | 44,400円 |
| 年収約200万〜約370万円 | 530,000円 | 44,167円 | 44,400円 |
| 年収約200万円まで | 410,000円 | 34,167円 | 44,400円 |
| 住民税非課税 | 290,000円 | 24,167円 | 24,600円 |
毎月の限度額に届かなくても、年間上限が効く
令和8年7月までは、月の限度額に届かない月は、高額療養費が出ない月で、多数回該当の回数にも数えません。たとえば年収約370万〜約770万円の人が、毎月80,000円の窓口負担を12か月続けると、令和8年7月までは限度額(80,100円)にわずかに届かず、自己負担は960,000円でした。令和8年8月からは、月の限度額(85,800円以上)に届かなくても、年間の合計が年間上限の53万円を超えた分が戻るので、530,000円になります。
| 毎月の窓口負担(12か月続く) | 令和8年7月まで | 令和8年8月から | 差 |
|---|---|---|---|
| 3万円 | 360,000円 | 360,000円 | ±0円 |
| 5万円 | 600,000円 | 530,000円 | −70,000円 |
| 8万円 | 960,000円 | 530,000円 | −430,000円 |
上の表は年収約370万〜約770万円の区分です。毎月3万円は、合計36万円で年間上限に届かず、変わりません。年収約770万〜約1,160万円の人は、年間上限が111万円なので、毎月8万円(合計96万円)は上限に届かず、変わりません(960,000円)。年間上限は、毎月の負担が、その区分の「年間上限 ÷ 12」を超える人から効き始めます。
70歳未満の人は、医療機関ごと・入院外来ごとの自己負担が月21,000円以上のものだけが、合算(年間上限の合計も同じ)の対象です(協会けんぽ)。この記事の表は、毎月の金額がすべて対象になる場合です。
令和9年8月:区分が12に分かれ、各区分の上の層の限度額が上がる
令和9年8月から、所得の区分が12に細かくなります(健康保険法施行令の令和9年8月1日施行の改正)。令和8年8月の4つの区分のうち、各区分の一番下の層は、限度額が変わりません。その上の層ほど、限度額が上がります。医療費100万円(窓口30万円)の月で比べると、次のとおりです。
| 区分(年収の目安) | 令和8年8月〜 | 令和9年8月〜 | 差 |
|---|---|---|---|
| 約1,650万円〜 | 271,290円 | 342,000円 | +70,710円 |
| 約1,410万円〜約1,650万円 | 271,290円 | 303,000円 | +31,710円 |
| 約1,160万円〜約1,410万円 | 271,290円 | 271,290円 | ±0円 |
| 約1,040万円〜約1,160万円 | 183,130円 | 212,420円 | +29,290円 |
| 約950万円〜約1,040万円 | 183,130円 | 197,920円 | +14,790円 |
| 約770万円〜約950万円 | 183,130円 | 183,130円 | ±0円 |
| 約650万円〜約770万円 | 92,940円 | 116,720円 | +23,780円 |
| 約510万円〜約650万円 | 92,940円 | 104,830円 | +11,890円 |
| 約370万円〜約510万円 | 92,940円 | 92,940円 | ±0円 |
| 約260万円〜約370万円 | 61,500円 | 69,600円 | +8,100円 |
| 約200万円〜約260万円 | 61,500円 | 65,400円 | +3,900円 |
| 〜約200万円 | 61,500円 | 61,500円 | ±0円 |
多数回該当の額は、令和9年8月に、年収約200万円まで(標準報酬月額15万円以下)の人だけ、44,400円から34,500円に下がります(ほかは据え置き)。年収約370万円までの人で、窓口30万円の治療が6か月続く場合、自己負担は令和8年7月まで306,000円、令和8年8月から317,700円、令和9年8月から288,000円です。令和8年度は、この区分の年間上限は41万円で、保険者に確認を受けた人に、令和9年8月以降に払い戻されます(厚生労働省、協会けんぽ)。
いつ、どうやって戻るか
- 月ごとの限度額は、マイナ保険証を使うと、窓口の支払いが限度額までになります。使わなかった場合は、あとから保険者に申請して、超えた分を戻してもらいます。
- 年間上限は、8月から翌年7月までの合計で判定し、超えた分が保険者から戻ります。協会けんぽは、年間上限の高額療養費の申請を令和9年8月から受け付けるとしています(令和8年8月〜令和9年7月の分)。ほかの保険者の手続きは、加入先に確認してください。
- 多数回該当は、同じ保険者の中で数えます。転職などで保険者が変わると、リセットされます(協会けんぽ)。厚生労働省の専門委員会は、この点への対応を今後の課題としています。
- 高額療養費で戻った額は、医療費控除の計算で、補てんされる金額として差し引きます(国税庁 No.1120)。
この記事に入っていないこと
- 70歳以上の人の限度額・外来特例・外来の年間上限は、計算ツールで扱いますが、この記事の表には入れていません。令和8年8月に、外来特例の月額は、一般で18,000円から22,000円(年間上限216,000円)に上がり、住民税非課税には外来の年間上限(96,000円)ができました(厚生労働省)。
- 世帯合算、食事代・差額ベッド代・先進医療など保険がきかない費用、特定疾病(人工透析など。月1万円)、高額介護合算療養費は、入っていません。
- 区分は、標準報酬月額(国民健康保険は世帯の旧ただし書き所得の合計)で決まり、年収は目安です。表の「年収約◯◯万円」は、厚生労働省の表の年収換算です。
- 治療の月の金額は、毎月同じと仮定しています。実際は月ごとに違うので、月ごとの金額は、ツールの「月ごとに入力」で計算してください。
一般的な情報であり、専門的助言ではありません。実際の限度額・払い戻しは、加入している健康保険組合・協会けんぽ・市区町村が決めます。この記事は、2026年10月12日時点の内容です。令和9年8月の区分の細分化(施行前)は、施行までに変更される可能性があります。
出典
- 厚生労働省 — 高額療養費制度を利用される皆さまへ(令和8年8月・令和9年8月からの見直し。2026年7月31日更新)
- 厚生労働省 — 高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)(PDF。令和8年8月〜令和9年7月と令和9年8月〜の限度額・年間上限の表)
- 厚生労働省 — 高額療養費制度に関する参考資料(PDF。令和8年8月見直し前の表、多数回該当、年間上限の例、年間上限の月額平均)
- 厚生労働省 — 高額療養費制度の見直しについて(令和7年12月25日 第209回社会保障審議会医療保険部会 資料。保険者が変わるときの多数回該当のリセットは今後の検討、年間上限は本人からの申出を前提に開始)
- e-Gov法令検索 — 健康保険法施行令(第41条の3、第42条。令和8年8月1日施行と令和9年8月1日施行の改正後の版、附則 令和8年政令第240号)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ) — 高額療養費(年間上限の申請は令和9年8月から、多数回該当の数え方、21,000円以上の合算)