住宅ローン控除の年間の上限は、借入限度額の0.7%で決まります(14万円〜35万円)。ただし、その上限をそのまま受け取れるのは、控除できる税額(所得税と、住民税の一部)が上限以上ある人だけです。本サイトの試算(単身・給与のみ・35歳)では、上限14万円を使いきれる年収は約442万円、上限31.5万円なら約666万円です。この記事では、年収別の控除枠と、借入限度額を上げても控除額が増えない範囲を計算で確かめます。
控除額は「上限」ではなく「納めている税額」で決まる
住宅ローン控除は、年末のローン残高(借入限度額まで)の0.7%を、所得税から差し引く制度です(国税庁 No.1211-1)。所得税から引ききれない分は、翌年度の個人住民税から引かれますが、住民税から引ける額には上限があります。前年分の所得税の課税総所得金額等の5%、最高9.75万円です(総務省)。
つまり、1年に引ける額は「所得税額 + min(9.75万円、課税総所得金額の5%)」が枠になり、控除額はこの枠と「年末残高×0.7%」の小さいほうになります。所得税と住民税を合わせても枠が小さい人は、限度額が大きい住宅を選んでも、その差を使いきれません。
年収別の控除枠と、控除が効く年末残高の上限
| 額面年収 | 所得税 | 住民税へ回せる上限 | 控除枠(合計) | 枠を使いきる年末残高 |
|---|---|---|---|---|
| ¥3,000,000 | ¥26,900 | ¥26,900 | ¥53,800 | 約768万円 |
| ¥4,000,000 | ¥56,550 | ¥56,550 | ¥113,100 | 約1,615万円 |
| ¥4,500,000 | ¥72,850 | ¥72,850 | ¥145,700 | 約2,081万円 |
| ¥5,000,000 | ¥89,200 | ¥89,200 | ¥178,400 | 約2,548万円 |
| ¥6,000,000 | ¥146,200 | ¥97,500 | ¥243,700 | 約3,481万円 |
| ¥7,000,000 | ¥272,300 | ¥97,500 | ¥369,800 | 約5,282万円 |
| ¥8,000,000 | ¥426,700 | ¥97,500 | ¥524,200 | 約7,488万円 |
| ¥10,000,000 | ¥804,300 | ¥97,500 | ¥901,800 | 約12,882万円 |
たとえば年収500万円の控除枠は¥178,400で、これは年末残高が約2,548万円のときの控除額に相当します。年末残高がこれより多くても、この年収では、それ以上は控除額が増えません。
上限ごとの「満額使える年収」
令和8年以降に入居する場合の借入限度額は、住宅の種類・性能と、子育て世帯・若者夫婦世帯かどうかで5段階に分かれます。それぞれの年間の上限を使いきれる最低の年収(1万円刻みで探索)は、次のとおりです。
| 借入限度額 | 年間の上限 | 満額使える年収 | 当てはまる住宅の区分(令和8年入居) |
|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 14万円 | 約442万円 | 新築・省エネ基準適合、買取再販・省エネ基準適合、買取再販・その他、既存・省エネ基準適合、既存・その他 |
| 3,000万円 | 21万円 | 約549万円 | 新築・省エネ基準適合(子育て世帯等)、買取再販・省エネ基準適合(子育て世帯等)、既存・省エネ基準適合(子育て世帯等) |
| 3,500万円 | 24.5万円 | 約602万円 | 新築・ZEH水準、買取再販・ZEH水準、既存・認定住宅、既存・ZEH水準 |
| 4,500万円 | 31.5万円 | 約666万円 | 新築・認定住宅、新築・ZEH水準(子育て世帯等)、買取再販・認定住宅、買取再販・ZEH水準(子育て世帯等)、既存・認定住宅(子育て世帯等)、既存・ZEH水準(子育て世帯等) |
| 5,000万円 | 35万円 | 約687万円 | 新築・認定住宅(子育て世帯等)、買取再販・認定住宅(子育て世帯等) |
限度額を上げても、控除額は同じ比率では増えない
借入4,500万円(年1.0%・35年・元利均等、12月に借入して1年目の年末残高が4,500万円)で、新築の認定住宅(借入限度額4,500万円)と、省エネ基準適合住宅(同2,000万円)を、13年間の控除額の合計で比べます。
| 額面年収 | 認定住宅(限度額4,500万円) | 省エネ基準適合(限度額2,000万円) | 差 |
|---|---|---|---|
| ¥5,000,000 | ¥2,319,200 | ¥1,820,000 | ¥499,200 |
| ¥8,000,000 | ¥3,482,900 | ¥1,820,000 | ¥1,662,900 |
年間の上限で見ると、認定住宅の31.5万円は省エネ基準適合の14万円の2.25倍です。ところが年収500万円では、控除枠が¥178,400なので、13年間の合計の差は¥499,200にとどまります。年収800万円では控除枠に余裕があり、差は¥1,662,900まで広がります。
これは控除額だけの比較です。住宅の価格、性能による光熱費、ローンの利息などは含んでいません。どの住宅が得かを判断する材料ではなく、「限度額が大きいことと、実際に控除を受けられることは別」という点を確かめるための計算です。
控除枠を変える要因
- 所得控除:配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、医療費控除、iDeCoの掛金などで課税所得が減ると、所得税額と住民税へ回せる上限が下がり、控除枠は小さくなります。この記事の表は、これらがない場合の枠です。
- 年齢:40歳から介護保険料が加わり課税所得が減るため、枠はわずかに下がります。年収600万円で、30歳と40歳の差は¥4,900です。
- 夫婦でローンを組む場合:連帯債務やペアローンでは、それぞれが自分の分の控除を受けるため、枠は各人の税額で決まります。持ち方によって取り扱いが異なるので、詳しくは税務署にご確認ください。
- 制度の変更:令和8・9年分の基礎控除の特例が終わると課税所得が増え、枠も変わります。ここでの数字は令和8年分の税制で計算しています。
自分の条件で確かめる
住宅の種類・性能、入居年、借入額、年収を入れて年ごとの控除額を計算するには、住宅ローン控除シミュレーションをご利用ください。毎月の返済額や総利息は住宅ローン返済シミュレーションで確認できます。適用の可否(床面積・築年数・証明書など)や、実際の控除額は、税務署または国税庁のサイトでご確認ください。