会社員の夫が亡くなったとき、妻は遺族厚生年金を受け取り、子がいれば遺族基礎年金も加わります。ここまでは、遺族年金の説明でよく見る内容です。ただ、令和8年度の決まりを月ごとに計算すると、妻の年齢と子の年齢のわずかな差で、65歳までの総額が1,000万円以上違う線がいくつかあります。条文と日本年金機構のガイドを読んで、その線がどこにあるかを、同じ設定の表にしました。
40歳の線: 子のない妻の中高齢寡婦加算
遺族厚生年金に、妻が40歳から65歳になるまで、中高齢寡婦加算(令和8年度は年635,500円、遺族基礎年金の3/4)がつくのは、妻が遺族厚生年金の受給権を取得した当時(夫が亡くなったとき)、40歳以上65歳未満だった場合です(厚生年金保険法第62条)。亡くなったとき39歳だった妻には、あとで40歳になっても加算はつきません。
年齢は、年齢計算ニ関スル法律と民法第143条により、誕生日の前日に1つ上がります。たとえば12月1日生まれの妻は、11月30日に40歳に達します。表は12月1日生まれで、10月15日に亡くなったときの年齢です。
| 亡くなった日の妻の年齢 | 65歳までの総額 | うち遺族厚生年金 | うち中高齢寡婦加算 |
|---|---|---|---|
| 28歳 | 247万円 | 247万円 | — |
| 29歳 | 247万円 | 247万円 | — |
| 30歳 | 1,681万円 | 1,681万円 | — |
| 35歳 | 1,435万円 | 1,435万円 | — |
| 39歳 | 1,237万円 | 1,237万円 | — |
| 40歳 | 2,719万円 | 1,188万円 | 1,530万円 |
| 45歳 | 2,154万円 | 941万円 | 1,213万円 |
| 50歳 | 1,590万円 | 695万円 | 895万円 |
| 55歳 | 1,025万円 | 448万円 | 577万円 |
| 60歳 | 461万円 | 201万円 | 259万円 |
39歳と40歳の差は1,481万円で、ほとんどが中高齢寡婦加算(40歳の妻の合計1,530万円)です。40歳になるまで子がいなかった妻は、加算がつかないぶん、39歳以下の表のように総額が小さくなります。加算の額は年635,500円ですが、40歳から65歳までの約25年間続くので、1,500万円を超えます。
30歳の線: 子のない妻の遺族厚生年金は5年で終わる
亡くなったとき30歳未満の妻で子がいなければ、遺族厚生年金は、受給権を取得した日から5年で終わります(第63条1項5号。日本年金機構のガイドも「30歳未満の子のない妻は5年間の有期給付」としています)。29歳は60か月分の247万円、30歳は65歳まで続いて1,681万円です。差は1,435万円です。30歳になる日は、やはり誕生日の前日です。
この30歳の線は、令和10年4月に変わります。厚生労働省の説明では、令和10年4月から、18歳年度末までの子がいない配偶者は、60歳未満で死別したとき原則5年の有期給付になります(有期給付加算で額は約1.3倍。女性は20年かけて段階的に実施)。亡くなる日が令和10年4月1日以後なら、この表は当てはまりません。
子がいる妻: 子が15歳だと、妻が40歳のときに子がいなくなる
子がいる妻には、子が18歳に達した日以後の最初の3月31日までは遺族基礎年金(847,300円+子の加算)が出て、その間は中高齢寡婦加算は止まります。子の年度末のあと、妻が40歳以上で遺族基礎年金が終わったとき、加算がつくのは、「40歳に達した当時、子と生計を同じくしていた妻」です(第62条。日本年金機構のガイドも、「40歳に達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けていた妻」としています)。
つまり、妻が40歳になる日に、子の遺族基礎年金がまだ出ているかが分かれ目です。夫が亡くなった日に妻が35歳(1990年12月1日生まれ。40歳に達する日は2030年11月30日)、子が1人(4月2日生まれ)の場合の表です。
| 亡くなった日の子の年齢 | 65歳までの総額 | うち遺族基礎年金 | うち中高齢寡婦加算 |
|---|---|---|---|
| 0歳(2026年6月生まれ) | 4,122万円 | 2,009万円 | 678万円 |
| 5歳 | 3,894万円 | 1,464万円 | 996万円 |
| 10歳 | 3,666万円 | 918万円 | 1,313万円 |
| 12歳 | 3,575万円 | 700万円 | 1,440万円 |
| 13歳 | 3,530万円 | 591万円 | 1,504万円 |
| 14歳 | 3,484万円 | 482万円 | 1,568万円 |
| 15歳 | 1,807万円 | 373万円 | — |
| 17歳 | 1,589万円 | 155万円 | — |
子が14歳(2012年4月2日生まれ)なら、遺族基礎年金は2031年3月分まで出て、妻が40歳になる2030年11月30日にはまだ出ています。そのため、子の年度末のあとから65歳まで加算がつきます。子が15歳(2011年4月2日生まれ)だと、年度末は2030年3月で、妻の40歳より前です。加算はつかず、総額は1,807万円です。子が小さいほど遺族基礎年金の期間が長くなりますが、14歳と15歳の差(遺族基礎年金の1年分は約109万円)に比べて、加算の約1,570万円のほうがはるかに大きいのです。
同じ年でも、子の誕生日で差が出ます。子が2020年4月1日生まれだと、18歳に達する日が3月31日なので、遺族基礎年金は2038年3月分までです。4月2日生まれは2039年3月分まで。妻が35歳なら、4月1日生まれのほうが遺族基礎年金が1年短いぶん、加算が1年早く始まって、65歳までの総額は3,803万円と3,848.6万円で、約45.6万円の差です。
夫の収入(平均標準報酬額)で、どれだけ変わるか
遺族厚生年金は、亡くなった方の報酬比例の3/4なので、夫の平均標準報酬額に比例します。遺族基礎年金と中高齢寡婦加算は報酬に関係なく同じ額です。妻35歳・子1人(2020年4月2日生まれ)の場合です。
| 平均標準報酬額(月額) | 遺族厚生年金(年額) | 子がいる間(年額) | 子の年度末のあと(年額) | 65歳までの総額 |
|---|---|---|---|---|
| 25万円 | 308,306円 | 1,399,406円 | 943,806円 | 3,311万円 |
| 35万円 | 431,629円 | 1,522,729円 | 1,067,129円 | 3,669万円 |
| 45万円 | 554,951円 | 1,646,051円 | 1,190,451円 | 4,028万円 |
| 55万円 | 678,274円 | 1,769,374円 | 1,313,774円 | 4,387万円 |
| 65万円 | 801,596円 | 1,892,696円 | 1,437,096円 | 4,745万円 |
平均標準報酬額が25万円から65万円まで2.6倍になっても、総額は約1.4倍にしか増えません。基礎年金と加算の定額部分が、全体の半分以上を占めるからです。
この表に入っていないこと
遺族年金を受け取るには、亡くなった方の保険料の納付要件、生計維持(年収850万円未満が原則)などの要件があります。この表は、それを満たし、年金を請求した場合の計算です。平均標準報酬額は、年収÷12に近い金額で、過去の給与を現在の価値に直す再評価は入っていません。亡くなった方が年金を受けていた場合、遺族が夫の場合、令和10年4月1日以後に亡くなった場合は別の計算です。65歳以降の遺族厚生年金と、妻自身の老齢年金はこの表の合計に入れていません。実際の額は、遺族年金の計算に、亡くなった日と配偶者・子の生年月日を入れて確かめてください。
出典
- e-Gov法令検索 — 厚生年金保険法(第60条 遺族厚生年金の額、第62条 中高齢寡婦加算、第63条1項5号 30歳未満の妻の5年。現行の版と、令和10年4月1日施行の版を読んだ)
- e-Gov法令検索 — 国民年金法(第38条・第39条 遺族基礎年金と子の加算、第40条 失権)
- 日本年金機構 — 遺族年金ガイド 令和8年度版(PDF。847,300円・子の加算・中高齢寡婦加算635,500円、40歳に達した当時に子がいる妻の扱い、30歳未満の妻の5年)
- e-Gov法令検索 — 年齢計算ニ関スル法律・民法第143条(年齢は出生の日から起算し、期間は応当日の前日に満了する)
- 厚生労働省 — 遺族厚生年金の見直しについて(令和10年4月施行)