医療費控除でいくら戻る?年収別・医療費別の目安と、所得税の還付・住民税の軽減の内訳(令和8年分)

独身・年収500万円で医療費が30万円かかると、医療費控除は20万円。減る税金は所得税が約1万円(確定申告で還付)、住民税が約2万円(翌年度の住民税が減る)で、合計約3万円です。所得税の税率が5%の区分は、令和8年度改正で年収約475万円までから約525万円までに広がりました。セルフメディケーション税制との損益分岐と、共働き夫婦の違いも計算します。

公開日 2026年9月26日

出典の確認・検証・訂正について

医療費控除は「10万円を超えた分が戻る」と説明されることがありますが、戻るのは超えた分の全額ではなく、その分にかかっていた税金です。所得税は確定申告で還付され、住民税は翌年度の住民税が減ります。この記事では、独身の会社員を例に、年収と医療費ごとにいくら減るのかを、当サイトの計算エンジンで求めます。

計算は当サイトの医療費控除シミュレーションと同じもので、所得税法第73条、租税特別措置法第41条の17、国税庁のタックスアンサーにもとづいています。令和8年分(2026年1〜12月に支払った医療費)の確定申告が対象です。

医療費が30万円なら、年収500万円の独身で約3万円減る

年収500万円・独身・扶養なし(35歳・給与のみ)の人が医療費を30万円払った場合、足切りの10万円を引いた200,000円が控除額です。所得税は10,210円が確定申告で還付され、住民税は20,000円、翌年度の住民税が減ります。合計は30,210円で、払った30万円の約1割です。

支払った医療費控除額所得税の還付住民税の軽減合計
100,000円0円0円0円0円
150,000円50,000円2,553円5,000円7,553円
200,000円100,000円5,105円10,000円15,105円
300,000円200,000円10,210円20,000円30,210円
500,000円400,000円20,420円40,000円60,420円
1,000,000円900,000円45,945円90,000円135,945円
2,500,000円2,000,000円91,073円200,000円291,073円
前提:独身・35歳・扶養なし・給与所得のみ・年収500万円。保険金などの補てんはなし。社会保険料は全国平均の料率による概算で、生命保険料控除などほかの所得控除は入れていません。

所得税の税率が5%の区分(課税所得が195万円未満)にいる人は、控除額1万円あたり、所得税が約510円(5%と復興特別所得税2.1%)、住民税が1,000円(10%)で、合計約1,510円です。医療費が250万円かかっても控除額は200万円が限度で、所得税は納めていた全額(91,073円)までしか戻りません。

所得税は「戻る」、住民税は「減る」

住民税は現金では戻りません。前年の所得について医療費控除を差し引く決まりなので(地方税法第314条の2)、令和8年分の医療費控除は、令和9年度(2027年6月から)の住民税を減らします。同じ医療費30万円で、年収を変えて比べます。

額面年収所得税の税率所得税の還付住民税の軽減合計住民税の割合
300万円5%10,210円20,000円30,210円66%
400万円5%10,210円20,000円30,210円66%
500万円5%10,210円20,000円30,210円66%
600万円10%20,420円20,000円40,420円49%
700万円20%40,738円20,000円60,738円33%
800万円20%40,840円20,000円60,840円33%
1,000万円20%40,840円20,000円60,840円33%
1,200万円23%46,966円20,000円66,966円30%

年収が高いほど所得税の税率が上がって還付は増えますが、住民税の軽減は年収にかかわらず同じ20,000円(控除額の10%)です。年収400万円・500万円の独身では、住民税の軽減の方が所得税の還付より大きく、合計の約3分の2を占めます。「確定申告で戻ってくる額」だけを見ると、この人たちが医療費控除で得をする額の約3分の1にしかなりません。

令和8年度改正で、税率5%の区分が広がった

令和8年分から基礎控除が最大104万円に引き上げられたため(令和8・9年分)、課税所得が195万円未満になる年収の範囲が広がりました。独身(35歳・給与のみ)で、医療費控除を受ける前の課税所得が195万円未満になる年収の上限は、改正前のルールでは約475万円、改正後は約525万円です。配偶者(収入なし)と16歳未満の子2人がいる世帯では、約528万円から約583万円になります。

この範囲の人が医療費控除で得る所得税の効果は、控除額の約5.1%と小さく、住民税(10%)の方が大きくなります。「改正前」は、令和8年度改正がなかった場合の令和8年分の基礎控除(合計所得132万円以下は95万円、336万円以下は88万円、489万円以下は68万円、655万円以下は63万円)で計算した値です。

税率の区分をまたぐと、「控除額×税率」より少なくなる

所得税の税率が高い区分にいる人でも、控除で課税所得が下の区分に下がる場合は、控除額に高い方の税率を掛ける簡易計算は実際より多くなります。課税所得が330万円のすぐ上にいる例として、年収675万円の独身を見ます。控除前の課税所得は3,311,000円で税率20%ですが、控除200,000円で3,111,000円(税率10%の区分)に下がります。「控除額×20%(復興特別所得税を含む)」の簡易計算では40,840円になりますが、控除の前後の税額を実際に計算すると21,543円です。

所得税と住民税の税率が変わる境目にいる人は、簡易計算ではなく、控除の前後の税額の差で確かめてください。

収入が少ない人は、足切りが10万円より低くなる

総所得金額等(給与だけなら給与所得)が200万円未満の人は、足切りが10万円ではなく、総所得金額等の5%になります(所得税法第73条)。独身の給与収入で言うと、およそ300万円未満です。医療費20万円の場合を比べます。

額面年収総所得金額等足切り額控除額所得税の還付住民税の軽減
200万円1,260,000円63,000円137,000円0円13,700円
240万円1,600,000円80,000円120,000円6,126円12,000円
280万円1,880,000円94,000円106,000円5,411円10,600円
300万円2,020,000円100,000円100,000円5,105円10,000円

年収200万円の独身は、所得税の課税所得が0円で所得税がかからないため、所得税の還付は0円です。所得税の還付は、源泉徴収された所得税があってはじめて発生します(国税庁 No.2030)。それでも、住民税の軽減は13,700円あります。

セルフメディケーション税制が有利になるのは、医療費の合計が「対象薬+8万8,000円」より少ないとき

セルフメディケーション税制の控除額は、対象の市販薬の購入額から1万2,000円を引いた額(上限8万8,000円)、通常の医療費控除は、医療費の合計から足切り(10万円)を引いた額です。対象の市販薬をすべて治療のために買い、通常の医療費にも含まれるとすると、通常の控除がセルフメディケーション税制の控除に追いつくのは、医療費の合計が「足切り10万円+セルフメディケーション税制の控除額」になったときです。

対象の市販薬の購入額セルフメディケーション税制の控除額通常の控除が追いつく医療費の合計
20,000円8,000円108,000円
30,000円18,000円118,000円
50,000円38,000円138,000円
80,000円68,000円168,000円
100,000円88,000円188,000円

医療費の合計がこの額より少なければ、セルフメディケーション税制の方が控除額が大きくなります。対象の市販薬が10万円を超えても、通常の控除が上回るのは医療費の合計が188,000円を超えたときです。市販薬だけで188,000円を超える場合は、最初から通常の控除の方が大きくなります。控除額が大きいほど税金が減る額も大きくなるので、控除額の大きい方を選べばよい、ということです。

ただし、どちらか一方しか選べず、確定申告のあとで選び直すことはできません(国税庁 No.1131)。セルフメディケーション税制は、健康診断や予防接種などの「一定の取組」を行っていることも条件です(国税庁 No.1129)。この表は、総所得金額等が200万円以上(足切り10万円)で、保険金などの補てんがない場合です。

共働き夫婦は、誰が支払ったかで戻る額が変わる

医療費控除は、医療費を実際に支払った人が受けます(国税庁 No.1120)。お互いを扶養にしていない共働き夫婦(年収700万円と300万円)が、医療費40万円を支払った場合を比べます。

支払い方所得税の還付住民税の軽減合計
年収が高い方が全額を支払う50,948円30,000円80,948円
年収が低い方が全額を支払う15,315円30,000円45,315円
半分ずつ支払い、別々に申告する25,525円20,000円45,525円

同じ40万円でも、年収700万円の人が支払うと合計80,948円、年収300万円の人が支払うと45,315円で、差は35,633円です。所得税の税率(20%と5%)が違うためで、住民税の軽減は同じです。また、半分ずつ払って別々に申告すると、足切りが2回引かれて控除額の合計が10万円少なくなり、合計は45,525円です。

医療費は実際に支払った人が控除を受けるので、誰が支払うかは、家計の実態にもとづいて決まります。この表は、支払った人によって結果が変わることを示すもので、支払い方を勧めるものではありません。

この記事の前提と、確認できていないこと

  • 表は、給与所得だけの会社員が、年末調整を済ませたうえで、医療費控除だけを確定申告で追加する場合です。独身・35歳・扶養なし(共働きの表は、お互いを扶養にしていない場合)で、保険金などの補てんはありません。
  • 社会保険料は料率による概算です(標準報酬月額の等級表は使っていません)。調整控除(最大2,500円)は含みません。年収の境目(税率5%の区分の上限など)は、この概算のため数万円ずれることがあります。
  • 住民税の軽減は、表の世帯では確実に減る額です。家族構成などで住民税の課税所得が変わる場合は、当サイトのシミュレーションが範囲で示します。
  • 「改正前」の数字は、国税庁の資料にある令和8年度改正前の基礎控除の表で計算しています。国税庁の確定申告書等作成コーナーの計算結果との照合はしていません。
  • 令和9年分から、セルフメディケーション税制の対象医薬品が広がります(金額は同じ)。この記事は令和8年分です。

自分の年収や医療費で計算したい場合は、医療費控除シミュレーションをご利用ください。一般的な情報であり、専門的助言ではありません。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、税務・法律・投資その他の専門的助言ではありません。金額は概算の目安で、制度や金利は変更されることがあります。個別の状況については、税理士・社会保険労務士・金融機関などの専門家にご相談ください。