iDeCoの一時金と退職金、どちらを先に受け取る?重なりを見る期間は「退職金が先なら19年、iDeCoが先なら9年」(令和8年から):退職金別の早見表と、75歳の期限

iDeCoの一時金は退職金と同じ退職所得で、前に受け取った退職手当等と勤続期間が重なる分は、あとから受け取るほうの退職所得控除から引かれます。重なりを見る範囲は、退職金が先なら19年、iDeCoが先なら9年(令和8年1月1日以後に受け取ったiDeCoの一時金。令和7年分までは4年)です。iDeCoの一時金1,000万円(40〜60歳の掛金)と、勤続38年・2,000万円の退職金の例では、iDeCoの分として増える税金は、同じ年に受け取ると993,262円、退職金を先に受け取れば5年後でも15年後でも957,425円、iDeCoを60歳で先に受け取って退職金を5年後にすると444,525円、10年後にすると151,050円(iDeCoだけのときと同じ)です。退職金が1,000万円・3,000万円の場合の早見表と、75歳の期限があるので退職金を先に受け取ると19年の範囲から出られないこと、年金・併用にしたときの違いを、国税庁と条文から計算しました。

公開日 2026年10月17日

出典の確認・検証・訂正について

iDeCoを一時金で受け取ると、勤め先の退職金と同じ「退職所得」になり、退職所得控除が使えます。ただし、前に受け取った退職金と勤続期間が重なる分は、あとから受け取るほうの控除から引かれます。重なりを見る期間は、どちらを先に受け取るかで違い、令和8年に変わりました。

iDeCoの一時金1,000万円(40歳から60歳まで掛金)と、勤続38年・2,000万円の退職金を受け取る人の場合、iDeCoの分として増える税金は、同じ年に受け取ると993,262円、退職金を先に受け取ってiDeCoを5年後でも15年後でも957,425円です。iDeCoを60歳で先に受け取って退職金を5年後にすると444,525円、10年後にすると151,050円(iDeCoだけのときと同じ)になります。

重なりを見る期間は3通り:4年・9年・19年

前に受け取った退職手当等(退職金やiDeCoの一時金)と、今回の勤続期間が重なっているとき、重なった年数ぶんの退職所得控除が、今回の控除から引かれます(所得税法施行令第70条)。どこまでさかのぼって「前の退職手当等」と数えるかは、次のとおりです(国税庁 No.2732)。

先に受け取ったものあとで受け取るものさかのぼる範囲
退職金など(退職手当等)退職金など前年以前4年内
iDeCoの一時金(令和8年1月1日以後に受け取ったもの)退職金など前年以前9年内(令和7年分までは4年内)
退職金などiDeCoの一時金前年以前19年内

範囲は暦年で数えます。「前年以前9年内」は、受け取る年の前年から9年前までです。同じ年に受け取った分は「前の退職手当等」ではなく、合計して1回で計算します。このとき勤続期間は、いちばん長い期間に、重ならない期間を足した期間です(国税庁 No.2735)。iDeCoの一時金を令和7年以前に受け取っていた場合は、これまでどおり4年内です。

重なりは、どう数えるのか

  • iDeCoの勤続年数は、掛金を払った期間です(所得税法施行令第69条第1項第2号)。運用だけをしていた期間は入りません。1年未満は切り上げます。
  • 重なるのは、iDeCoの掛金を払った期間と、退職金の勤続期間が重なった部分です。1年未満は切り捨てます。たとえば会社に勤めながら掛金を払った期間は、ほとんどが重なります。
  • あとで受け取るほうの退職所得控除から、重なった年数ぶん(20年まで1年40万円、20年を超えると1年70万円)を引きます。引いた結果が80万円に満たなければ80万円です(所得税法第30条)。
  • 前に受け取った退職金が、自分の勤続年数で計算した控除に満たないときは、その金額に見合う年数だけの期間として数えます(施行令第70条第2項。800万円以下なら収入金額÷40万円、800万円を超えると20年+(収入金額−800万円)÷70万円、1年未満切り捨て)。勤続38年で2,000万円の退職金は、控除2,060万円に満たないので37年として数えます。

受け取る順番と退職金の額で、iDeCoの分の税金はこう変わる

1,000万円のiDeCoの一時金(40歳から60歳まで20年間の掛金)を受け取るときに、退職金(勤続38年。60歳より遅く受け取る場合は、そのぶん勤続も延びる)との組み合わせで増える所得税と住民税です。退職金だけの税金は左から2列目、表の数字は「両方を受け取ったときの税金 − 退職金だけの税金」です。

退職金の額退職金だけの税金同じ年(どちらも60歳)退職金が先(60歳)、iDeCoは5年後(65歳)退職金が先(60歳)、iDeCoは15年後(75歳)iDeCoが先(60歳)、退職金は5年後(65歳)iDeCoが先(60歳)、退職金は10年後(70歳)
1,000万円0円0円270,900円270,900円151,050円151,050円
2,000万円0円993,262円957,425円957,425円444,525円151,050円
3,000万円993,262円1,676,703円957,425円957,425円1,323,700円151,050円
  • 退職金が1,000万円なら、同じ年に受け取ると、iDeCoの分は0円です。両方で通算38年の控除2,060万円(合計の収入は2,000万円)に収まるからです。iDeCoを先に受け取れば151,050円で、iDeCoだけのときと同じです。退職金を先に受け取ると270,900円かかります。1,000万円の退職金は小さいので、重なりは4年として数えられ、iDeCoの控除は640万円まで減ります。
  • 退職金が2,000万円なら、同じ年が993,262円、退職金を先に受け取ると957,425円で、5年後でも15年後でも同じです。重なりは19年として数えられ、iDeCoの控除は下限の80万円まで減るからです。iDeCoを先に受け取る場合は、退職金までの間隔が短いと444,525円、10年あけると151,050円と、重なりがなくなります。
  • 退職金が3,000万円なら、退職金だけで993,262円の税金がかかります。そこにiDeCoを加えると、同じ年はiDeCoの分が1,676,703円、退職金を先に受け取るなら957,425円、iDeCoを60歳で先に受け取って退職金を65歳にすると1,323,700円、70歳なら151,050円です。

退職金を先に受け取ると、19年の範囲から出られない

iDeCoは、請求しないまま75歳に達すると、老齢給付金が支給されます(確定拠出年金法第34条。個人型は第73条で準用)。ですから、退職金を56歳以上で受け取る人は、一時金を75歳までに受け取るとすれば、必ず退職金の「19年内」に入ります。「退職金を先に受け取ったら、iDeCoを20年あければ重ならない」とは、75歳の期限があるので、できません。60歳で退職金を受け取るなら、iDeCoは最長でも15年後です。

先に受け取る側を、iDeCoにするほうは、9年あけると重なりがなくなります。ただし、iDeCoを60歳で受け取って退職金を70歳(10年後)にできるのは、働き続けて退職金が遅くなる人など、限られます。受け取る時期は、運営管理機関や勤め先の制度でも決まるので、自由に選べるとは限りません。

年金や併用にすると、重なりの計算からは外れる

iDeCoを年金で受け取る部分は、退職所得ではなく公的年金等の雑所得になり、退職所得控除の重なりの計算には入りません(所得税法施行令第82条の2、国税庁 No.2725)。そのかわり、ほかの公的年金と合算して課税されます。退職金2,000万円を60歳、iDeCoを65歳に受け取るとして、公的年金が65歳から年150万円ある人が、運用は0%、10年の年金にした場合の、iDeCoの分として増える税金は次のとおりです。

受け取り方一時金分の税金年金分の税金(10年の合計)合計
全部、一時金957,425円0円957,425円
一時金50%+年金50%323,625円520,000円843,625円
全部、年金0円1,413,900円1,413,900円

この例では、一時金だけが957,425円、併用が843,625円、年金だけが1,413,900円です。年金の税金が大きいのは、公的年金だけなら住民税がかからない人に、iDeCoの年金が加わると住民税がかかり始めるためで、ほかの収入が多い人や、公的年金が少ない人では結果が変わります。住民税や、年金から引かれる国民健康保険料・介護保険料への影響は計算に入れていません。自分の数字は、iDeCoの節税額と受け取り時の税金シミュレーションで、退職金の額・勤続年数・受け取る年齢を入れて比べられます。

このガイドが計算していないこと

  • iDeCoを40歳から60歳まで20年間払った人と、勤続38年の退職金の例です。掛金を払った期間と勤続期間の重なりが違えば、数字は変わります。企業型DCの一時金(事業主掛金の期間)も、iDeCoと同じ退職所得ですが、ここでは扱いません。
  • 令和30年分(2048年)以後の防衛特別所得税は1%が続くと仮定しています。退職所得の税額は、所得税と住民税(所得割10%)を合わせて計算し、ほかの所得は考えていません。障害退職、特定役員退職手当等、勤続5年以下の短期退職手当等の特例は含みません。
  • 年金の例は、公的年金が年150万円(65歳から)、令和10年分以後の基礎控除で、住民税の非課税の目安(合計所得45万円、単身・1級地)を使った概算です。年金から引かれる保険料への影響は含みません。
  • 「先に受け取るほうが得」「年金のほうが得」といった判断はしません。ここに書いたのは、制度がどう動くかの計算です。実際の税額は、退職所得の受給に関する申告書の記入内容や、お住まいの自治体の取り扱いで変わるため、税務署・税理士・運営管理機関にご確認ください。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、税務・法律・投資その他の専門的助言ではありません。金額は概算の目安で、制度や金利は変更されることがあります。個別の状況については、税理士・社会保険労務士・金融機関などの専門家にご相談ください。